いまさら「火花」

 又吉直樹の「火花」を作品単体で見たら、もちろん完成度は高いが、読んだ後の感想は、「芸人が小説を書いたら、なんでこんな追想型の感傷小説になってしまうんだろう」ということだった。「火花」は宮本輝みたいだったし。ピースのネタはあまり観たことはないが、芸人として売れたということは自分のなかのキチガイじみた部分をポップに昇華してきたということだし、そのキチガイの部分をそのまま小説化する芸人がいたら、それこそが文学だと思うなあ。ただの読み物になっちゃってる。たとえば町田康がバンド時代のことを懐かしい思い出として書くようなことはありえないだろう。混沌としたドグマを小説という手法で表現している。町田康は正しく文学者だ。そういう意味で言えば、賛否両論たくさんあるけれど、松本人志は文学的な感覚で映画を作ってる、と思う。